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Cyber U.S.A + 1998年4月
ニューヨークのMacな生活 |
1994年の夏に発売されたばかりのPowerBook520を持ってニューヨークに来たのは、もう3年半以上も前のことになる。この連載がはじまったのがその年の年末で、今までの原稿をざっと読み返してみたら、Macもインターネットもずいぶんと変化があったなぁと、しみじみとしてしまった。今回は連載の最後用に取っておいた、個人的な“ニューヨークのMacな生活”について書いてみたい。
孤立無援で四苦八苦
ニューヨークに来てすぐに、アップルが運営をはじめたばかりの“今は亡き”オンラインサービス、eWorldにサインアップした。いまやWebではあたりまえのかわいいグラフィックのユーザインタフェースや、ダウンロードしたファイルが自動的に解凍されることにいちいち感動していたころが懐かしい。
しかし、eWorldは漢字Talkには完全対応ではなかった(あたりまえか)ので、すぐにフォントが乱れたりアクセスができなくなった。eWorldのオンラインヘルプではじめて英語チャットをしたりして、四苦八苦してトラブルを解決した。
日本国外で日本語システムを使うことには何かとトラブルがついてまわる。「日本語のプリントが異常に遅いんだけど…」といった、知り合いからされる質問やトラブルにはお手上げのことの方多く、自分の問題ではないのに結構ストレスを感じてしまっていた。
いちばん大変だったのは、Webブラウザで日本語を表示させる時だった。「PPP接続が必要」と言われても、自分がどういう状態でインターネットに接続しているのかさっぱり分からず。これまたなつかしのMosaicが使えるようにはなったが、日本語表示させるパッチはどこにあるの? と、本や雑誌と格闘する日が何日も続いた(日本語表示は、Navigator 1.1がタイミングよく出たおかげでなんとかなった)。近くに誰も質問できる人がいない孤立無援の状態だったのだ。
地元のMacユーザーグループ(NYMUG)に入ってはいたものの、肝心の日本語環境はサポートしているはずもなく、「日本人Macユーザーの仲間が欲しい!」と切実に思いはじめたのはこの時だった。
NYの日本人Macユーザーを結集!?
デスクトップのMacにしてからは、英語の最新システムにJapanese Language Kit(JLK)をインストールして快適にMacを使っている(PowerBookはJISキーボードのせいで、漢字Talkのままなのだ)。JLKのおかげでMacは日本語化しやすいせいか、個人で使っている人が多いのはもちろん、ニューヨークの日系の会社、特に日本語出版物を発行している会社は、ほとんどがMacを使っているようだ。ニューヨーク在住のライター、編集者、デザイナー、アーティストは多いから、日本人Macユーザーは探せば結構いるのだ。
この連載を見てEメールをくれたニューヨーク在住の日本人Macユーザーに実際に会って声をかけ、95年の8月に私が発起人になってJapanese in New York Mac Users' Group(JNYMUG)というMacユーザーの集まりを立ち上げ、月に一度カフェに集まって、コーヒーでも飲みながら情報交換することになった。
メーリングリストやWebでの活動もしていたけれど、それらはJNYMUGから派生した公認MUGに譲り、いまでは月1回の集まりがメイン。MacユーザーがMacユーザーを呼び、一時期は25人以上でカフェを占領してしまい、お店からクレームがついたこともあった。最近は落ち着いて、毎月5〜12人くらいが集まり、Macユーザーのサロン的な存在になっている。
ここで知りあって仲良くしている人たちを見ると、母のような(笑)ほほえましい気分になってしまうのだった。
そんな訳で、いまではニューヨークの友達のほとんどが、MacユーザーでEメールで連絡を取り合っている…という状態になってしまった。
個人ホームページとEメール
自分のホームページを作り初めたのが同じく95年の夏。今考えると最初の頃は、はずかしくなるようなホームページだった…(特にグラフィック)。はじめてファイルをアップロードするときは「これが世界中の人に見られちゃうのね」と、心臓がドキドキしてはじらいがあったのに、しばらくするとアクセス数が気になって、カウンターをつけたり、サーチエンジンに登録したりと、だんだんとずうずうしくなってきた。とあるWeb日記に触発されて自分も日記をはじめたのが96年3月。頻繁にアップデートしてアクセス数を上げるには日記が手っ取り早い。
そんなこんなでアクセスも増えて、知らない人からのEメールも増えた。ホームページの感想はともかく、質問も多い。「ニューヨークのMacを売ってるコンピュータショップを教えて」などという、私が答えるべき質問には喜んで返事を書くけれど、「ニューヨークへ旅行に行くのですが、安いホテルはありませんか?」「天気はどうですか?」という、Webをちょっと探せばある情報を質問してくる人がけっこういる。おまけにこの手は返事を書いてもほとんど「ありがとう」メールが来ない。
「懸賞に応募する小説のために、ニューヨークの刑務所やヘリポートについて調べて欲しいことがあるのですが」と複数の人に宛てたずうずうしい長文メールが舞い込んだり、「日本語が読めないけどおもしろそうなページですね」と自分の写真をいきなり添付してきたアメリカ人男性がいたりしたけれど、こういうのはちょっと恐い。
知らない人との奇妙なコミュニケーションがストレスになったりもするけれど、時に「自己満足」とも言われる個人のホームページを運営していてよかったと思うのは、たまに来るこんなメール。「何となく疲れた今日この頃。深夜にあなたのページを見つけました。全部読んで、ちょっと元気になりました」。まったく知らない誰かのために役立ってると思うと、私もちょっと元気になるのだった。