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Cyber U.S.A + 1997年12月
Think Different広告キャンペーン |
アップルの新しい広告キャンペーン"Think Different"が大々的にスタートした。9月28日の夜にABCテレビで放映された映画「Toy Story」の中で、60秒のコマーシャルが2回放映されたのを皮切りに、雑誌、新聞、ビルボード広告と展開している。1984年のスーパーボウル中継の際に放映された伝説のテレビCM、"1984"を制作したTBWA Chiat/Day社がThink Differentキャンペーンを再び手掛けることで、CM放映の前評判は高かった。
何かのイベント前のような期待を持ちつつテレビをつける。番組のスポンサーとして、リンゴのロゴとアップルの名前が最初に登場。肝心のCMは約1時間後に放映された。
モノクロの画面。アインシュタインからはじまり、ボブ・ディラン、キング牧師、モハメド・アリ、リチャード・ブランソン(ヴァージングループの会長で冒険家でもある)、ジョン・レノン、カンジー、ヒッチコック、ピカソらが次々に現れる(私が一瞬の映像だけで認識できた人たちはこれくらい)。ナレーションは「物の見方が違う、周囲に適応できない人、反逆者、トラブルメーカー、クレイジーな人たちを人々はほめたたえたり、異議を唱えたりすることはできるが、彼らを無視することはできない。彼らは発明し、想像し、探索し、物を作り…と人類を前進させている--世界を変えることができると考えているクレイジーな人たちが、本当に世界を変えることができる」といった内容。アップルは「クレイジーだと思われる人を天才と見なし、このような人々のための“ツール”を作る」、と宣言している。
CMの最後には無名の女の子の気だるそうな顔が。この子がMacユーザーで次世代の天才になる…という訳か。そして最後にThink Differentの文字。
Think Differentとは、この夏のMacworld Expoの基調講演で、スティーブ・ジョブスから初めて聞いた言葉だったと思う。その時はマイクロソフトとの提携の発表があって、「提携なんて晴天の霹靂だけど、とんでもない話ではなさそうだし、見方をちょっと変えてみては? ってことかな」と納得されられた言葉だったのだけれど、テレビCMには違和感を感じてしまった。
クレイジーをアップルに置き換えてみれば…。いじわるな見方かも知れないが、一昔前の「アーティストやクリエイターが使ってるMac」といった特権意識みたいなものが押し出されているような気がする。著名人のオンパレードも、簡単で楽しいからとMacを使っている普通の人の私などは、疎外感のようなものを感じてしまった。
なんとなくフラストレーションが残る。個人的には、もっとユーモアが欲しかった。
一般のMacユーザーから募集した、Apple "Dreams" TV Ad Contestの受賞作品はよかった。
15歳以下のカテゴリーの最優秀作品、マーク・ソーントン君の"Nightmare(悪夢)"は秀逸。本人(たぶん)がベッドに入って、3DグラフィックなどのカラフルなMacの夢を見る。朝起きてMacを起動すると、なぜかDOSのプロンプトがモニタに現れて絶叫。それでまた目が覚める…という筋書きなのだが、アイデアも抜群。
サンフランシスコのMacworld Expoの基調講演の最初にプレゼンされた、映画「Independence Day」のCMは、PowerBookがフィーチャーされて、それが地球を救うというストーリー。最後にThe power to save the worldと大胆宣言。ばかげてはいるけど、あの爽快感がなつかしくなったりして。
Webで公開されている、ジョブズ暫定CEOが社員に宛てた手紙には、Think Differentは「ナイキ、ディズニー、コカコーラやソニーと並ぶブランドであるアップルのブランドイメージに投資をし、効果を維持するため」の広告キャンペーンだから、具体的な製品が登場しないイメージ広告でもいいのかもしれない。結果的には、テレビCMは大いに話題となったし。
それにつけても、広告キャンペーンの皮切りの成功は“ジョブス効果”と言っていい。Toy StoryはジョブスがCEOを務めるピクサーが製作した映画というのは周知の事実。もうひとつおまけに、現在好評のABCテレビのTV is Goodキャンペーンを手掛けているのはTBWA Chiat/Dayなのだそうだ。これは単なる偶然ではないだろう。
TV is GoodキャンペーンはテレビCM、Webサイトバスの車体広告、ビルボード、ショップに置いてあるポストカードなどすべてに渋めの黄色を使っていてかなり目を引く。TV is Goodという思わず笑ってしまうシンプルさも印象に残る。WIRED10月号のTired/WiredではTiredなのがABCのコンテンツ(中身)で、Wiredなのが、このキャンペーンとジャッジされていたほど。
あれ? できるんだったらThink Differentもこういったキャンペーンにしてくれればよかったのに…。
今月の近況●ニューヨークのコンピュータショップで売り上げソフト・ナンバー1は、発売以来Mac OS8が占めている。マーケット的に大きいニューヨークで、来年夏からMacworld Expoが開催されるのも当然、と思った。ボストンでオイスターとロブスターを食べる楽しみは減ったけど。