Cyber U.S.A + 1997年7月
揺らぐ!? “出版業界はMac”の常識
 

出版業界にもWindows?

 出版関連の展示/講習会であるシーボルド・セミナーズが、初めてニューヨークで開催された。展示会場での目玉は、QuarkXPress 4.0とType1, 2でなくなったアドビのPostScript 3、ということで見に行ったのだが、思わずがく然としてしまったことがあった。QuarkXPress 4.0の大スクリーンを使ってのプレゼンテーションが、Windows版ソフトで行われていたのだ! アドビのブースに行くと、ここでもWindows版を使ってのデモが。出版業界ではMacという常識は崩れつつあるのだろうか…、とショック受けつつPageMakerやPageMillのWindows版のデモを見ていると(こういったMacっぽいアプリケーションのWindows版を見たのは初めてだった)、ほとんどMacと一緒の操作方法で、Macの画面を見ているような錯覚に。

 ここまでそっくりだと「だったら本家の方がいいでしょう」と思うが、「そうしたいのはやまやまだがソフトが少ない」というクリエイター側の話も聞く。

 マクロメディアのブースでは、Web上で動くベクターラインを使ったアニメーションが作れる、Flash2のハンズオン・デモが人気だった。ここではMacとWindowsマシンが一台ずつ交互に置かれていて、自分でマシンを選べるようになっていたのが親切で泣けた。

 アップルのブースではMasters of the Mediaをスローガンに、デジタル・メディアを制作する上で、アップルのテクノロジーがほかのプラットフォームと比べて、コストを押さえて利益を出すことが簡単かをアピールしていた。

 毎年6月恒例のPC Expo内で、今年はMac OS Expoも開催されることになった。いままでPC Expoといえば、Macの姿をほとんど見かけることがなく、配られているCD-ROMなどもWindows用ばかりで、アップルのブースでさえ、PCコンパチブルカードを大々的にデモしていたという状態で肩身が狭かったのだが、今年はMacユーザーも大いに楽しめそうだ。

 昨年12月に行われたニューヨークで行われたインターネットワールドでは、アップルはインターネットに力を入れると言っていた割にはおそまつなブースしか出していなくて、とある記者質問会でそのことを指摘されて反省していたが、その効果が表われたか!? と思っている。

卒業の季節

 一枚のハガキがスクール・オブ・ビジュアルアーツから送られてきた。MFAコンピュータアート学部の卒業制作プレゼンテーションのお知らせだった。大学院の卒業制作の発表会が、一般に公開されているのがおもしろいなと思い、見に行ってみた。

 コンピュータ・アニメーションとインタラクティブ・マルチメディア、そして、テレコミュニケーション/バーチャルリアリティ/インスタレーションというジャンル分けで、4日間かけて行われた。

 インタラクティブ・マルチメディアでプレゼンテーションを行った9人の学生のリストを見ると、うち7人がアジア系の名前なので驚いた。韓国人が多く、別の日もアジア系の名前が目立っていたが、日本人の名前が見られなかったのが残念。

 アメリカの大学では理数系の学生にアジア系の優秀な学生が多いというけれど、コンピュータアートの世界でもそうなりつつあるのか? と、思わせられるほどの多さなのだ。

 学校内のこじんまりとしたシアターには、プレゼンテーションをする学生の家族や友人たちが集まり、アットホームな雰囲気に包まれていた。客席には6月号の表紙に登場したロドニー・グリーンブラット氏もいて(卒業制作のアドバイザーを努めている)、学生からお礼の言葉を贈られていた。

 インタラクティブ・マルチメディアでは、ほとんどの学生がCD-ROM作品を制作したようだ。傾向としては、まったくアメリカンなポップな作品、自国のテイストを出した作品とバラエティに富んでいたが、中には趣味に走りすぎて、見ている者を眠くさせる作品もあり、まさに玉石混交。

 いちばん印象に残ったのは、ウクライナからの移民である学生が作った、子供向けウクライナ語のマルチメディア教材だった。

 移民にとって、母国語を伝え続けるのは、文化を伝えることでもあり、重要なのである。そんな思いが伝わってくるような作品だった。

 テレコミュニケーションでは、Webサイトのプレゼンテーションが目立った。ここまでMacで作られた作品がほとんどだったのが、バーチャルリアリティのジャンルではWindowsマシンで作られた3D作品が登場してきた(これが「ソフトが少ない」っていう現象なのだろうか…)。

 ある作品で、警告音やメッセージボックスなどのMacのインタフェースを多用した作品があったのだが、それが出てくるたびに、理由もなく観客が笑ったり声をあげたりする。どうやら客席のほとんどの人たちがMacユーザーで、そうやって反応することで、自分はMacユーザーなんですよ、とアピールしているようでおかしかった。

 聞くと学生たちは、卒業制作のプロジェクトのために2〜3年の歳月を費やしており、それだけに作品も気合が入ったものだった。自分の思い通りにできる学校のプロジェクトとは違ってこれからが大変だろうと思うが、ニューヨークにごろごろ転がっているチャンスをつかんでがんばって欲しいなと思った。

プロフィールより●5月1日に英語版のたまごっち“TAMAGOTCHI”がニューヨークで売り出された。New York Times on the Webにサンフランシスコ在住のライターによるTAMAGOTCHIの飼育日記が掲載されていたりして、メディアの扱いはなかなか良好。私もすっかりハマっている。



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