|
Cyber U.S.A + 1997年6月
メディアは悪いニュースがお好き? |
危篤を何度も乗り越え、小康状態を保っている、といった状態のアップルだが、本格的な手術が必要な時がきたのかもしれない。3月半ばに発表された4100人(全体の30パーセント)のレイオフと、OpenDocを筆頭としたいくつかの技術の開発中止決定。アップルはここ5四半期で9億3600万ドルの赤字を出しており、しばらくは黒字に転向しそうもないと言われている。そして、リストラにかかる費用は1億5500万ドル。管理職はともかく、アップル社内の開発者がどんどん辞めている。そろそろ“誰か”が“何とか”しないといけないのだろうか?
3月下旬にオラクルのCEOであるラリー・エリソン氏が、個人的に投資家グループを結成してアップルを買収する試案がサンノゼ・マーキュリー紙に発表されたのがきっかけとなって、再び「アップル買収か!? 」といったニュースがメディアで飛び交っている。
彼らがアップルを買収した場合、アメリオ会長はクビになって、スティーブ・ジョブス氏がトップに立つかも…というシナリオが恐いが、おもしろいのは、このニュースが流れた後でアップルの株価が上昇したことだ。そして、エリソン氏はオラクルのWebサイトに、試案に対する意見を募集するページを開設したが、数日でこのページは消えてしまった。
エリソン氏の買収試案で盛り上がった数日後、サウジアラビアのプリンス、ワリド王子が過去数週間でアップルの株を5パーセントを買い占めたというニュースが報じられた。
この大金持ちの40歳の王子、世界的な投資家で、過去に銀行や豪華ホテル、テレビ局や航空会社など、問題のある会社に投資をして成功を収めていることで定評があるやり手らしい。マイケル・ジャクソンと一緒にエンタテインメント関連の会社を設立しようとしているらしく、とあるWebサイトにはマイケルと握手している写真が掲載されていた。
こういった状況ではシリコンバレーのハイテク企業のトップでなくても、あれこれとアップルにアドバイスをしたくなるというものだ。あやしげな雰囲気がただよう人物ではあるが、王子がアップルの株を買った理由が「再び株主に大きなリターンをもたらしてくれるだろう」と肯定的なのでいまのところ印象は良い。
“試案”、“プリンス”とエンタテインメント性があったこれらの報道に、シリアスさがと加わったのが4月3日付けのニューヨーク・タイムズ紙の報道だ。アップルが友好的な合併相手を探して、再びサン・マイクロシステムズと買収の話し合いに入った…というのだ。もちろん、両社ともノーコメントのニュースだが。
たびたび引き起こされる、瀕死のアップルに対するメディアの報道合戦。ガイ川崎氏が某インタビューで「本当の敵はマイクロソフトではなくてメディアだ」と語ったように、米国のメディアはアップルに対して手厳しく、悪いニュースばかりを積極的に報道している印象が確かにある。即時性のあるインターネットは報道合戦にさらに拍車をかけ、私たちも、こういった報道合戦を楽しんでいるのかも知れない。
情報を即時にたくさん手に入れることはできる。でも、アップルがどうなるかを予測することは非常に困難だ。開発スケジュールや方針変更の発表を聞くたびに「またか」と思う。「最初の発表通りにいくことなんてないんじゃないか?」とさえ思うこともある。
開発中止が決まったOpenDocは、昨年のボストンのMacworld EXPOで、ようやっと「本格的に一般デビュー」し、「コンポーネント・ソフトのLiveObjectsがたくさん登場してくる」はずだったのだが、見事にコケてしまった。
半年ごとにアップデートしてリリースされる計画だったMac OSも、夏にリリースされる予定の7.7がMac OS 8.0として登場し、その後は1年おきにアップデートすると修正された。
進化が速いコンピュータ業界だけに、臨機応変に軌道修正していかないといけないのは分かるが、修正ばかりしているような…。私たちはそれが裏目に出ないようにと祈って見守るしかない。
新世代OSのRhapsodyも、こんなにお家がばたばたしていて開発は進んでいるんだろうか…と心配になってくる。
本誌が発売になる5月までには、何かがおこっているかも知れないし、全てが鎮静化して再び小康状態に戻っているのかも知れない。
しかし、アップルが最悪の状態でも私がMacを擁護してしまうのは、「本当にいいものはなくならない」というユーザーとしての確信があるので、アップルが買収されようが、パーツで売られようがMacはなくならないと思えるからだ。
心配事はない方がいいけれど、手のかかる子ほどかわいいように、アップルがマーケティングにだけは異様に冴えている某企業のようになってしまう方が恐いのである。
プロフィールより●自分でも驚くくらい熱心にMacを弁護していることがある。もしかしたら私、知らない間にガイ川崎氏に洗脳されているのかもしれない…。彼のしゃべり方は説教に近いものがある。